2014.12.3

本のレビューです。

ブログ管理人は、東日本大震災後、続々と出版された自衛隊を絶賛する本が嫌いでした。

特に、新聞社系の本は遺体捜索などの感傷的シーンが多く、自衛隊の任務は防衛よりも「災害派遣」と言わんばかりの作為的な作りとなっていました。
そもそも軍隊はいったん戦端が開かれたら、味方の屍を越えて任務を果たすべきものです。ゆえに、戦闘が伴わない「災害復旧」などは粛々と行って当然です。自衛隊に最大限感謝しつつも、冷静に評価することが必要ではないでしょうか。


なお、現場の自衛隊員の談話には、国家の非常時にあって、自己の悩みを告白する軟弱な隊員もおり、背筋をゾッとさせました。この点も併せて指摘しておきます。


そこで、この一冊。
志方俊之監修、芦川淳著で、災害派遣の実情や問題点、自衛隊の装備や改善点などが分かりやすく書かれています。
管理人は全く知りませんでしたが、震災直後に、陸海空の指揮系統が一本化された「災統合任務部隊」(正式名称)が編成され、その隷下にある陸海空の部隊は、「陸災部隊」「海災部隊」「空災部隊」と呼称されました。
また、3カ所の補給処が兵站施設として機能したことも初めて知りました。こうした組織的な対応は、まさに称賛に値し「こんなに凄かった」と再認識させるものでした。

戦前の陸海軍は、同じ国の軍隊でありながら、ほとんど協力することがありませんでした。クリント・イーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」には、それを感じさせる話が出てきますので、そうした歴史を振り返ると、この「災害派遣」の対応は素晴らしかったと思います。

話は変りますが、保守主義は、「美徳ある自由」を擁護しなければなりません。
その大前提として国家を永続させなければなりません。永続のためには、国軍である自衛隊の現状把握に努めなければなりません。(「憲法9条」だけで世界平和が実現できないように、「保守」の掛け声だけでは国は守れません。)

しかし、一般的な“自衛隊関連本”のほとんどは、兵器オタク系が喜びそうな兵器や兵装の解説が中心です。なかには、やたらと“強い自衛隊”を強調する本もありますが、これは防衛費削減狙いのロシア・中国の工作と思われます。実際読んでみると、開戦後○日で敵海軍を壊滅させるなど、さしたる根拠がないことが平気で書いてあります。「ホメ殺し」には充分な注意が必要です。

このような理由から、この一冊はお奨めできる数少ない“入門書”です。「中期防衛力整備計画(中期防)」を理解する先導役にもなります。

 
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