2018.7.13

 

ブログ管理人は、今更ではあるが、英国のEU離脱に反対する。

 

これまで沈思黙考していたが、反対を明確にする。「後出しじゃんけん」と揶揄されそうだが、この機会に整理して今後に備えたい。それに、これは決して他人事ではない。日本も他山の石とすべきだ。

 

先に反対の理由を述べる。

英国のEU離脱は、ロシアに裨益するからだ。

 

では、なぜロシアに裨益するか。それは、次の理由からだ。

1.地政学的に、英国のEU離脱はリムランドを脆弱化させる。
2.英国が離脱することで、連鎖離脱が起きかねない。
3.英国によるEU改革ができなくなる。

 

それぞれについて、考えてみる。

 

1.地政学的に、英国のEU離脱はリムランドを脆弱化させる。

 

まず最初に、英国がEUに参加した経緯を振り返る。ネット検索で、次のレファレンスを見つけたので引用する。

 

国立国会図書館 調査及び立法考査局 レファレンス

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9616693_po_078004.pdf?contentNo=1

 

保守党は元来、労働党と 異なり親ヨーロッパ政党とみられており、野党時代のサッチャー党首もEC加盟を強く支持してい た。

フォンテーヌブロー首脳会議でサッチャー首相は、「金融・保険を含むサービス取引および物と 人の輸送の自由化」のために、市場統合を達成すべきとする提案を行った(18) 。

いわゆるサッチャリズムの支持者にとって、単一市場とはそれ自体が目的であって、英国的な自由化と規制緩和をヨーロッパに拡大する構想であった。しかし、他の多くの加盟国にとって単一欧 州議定書は、経済統合と政治統合の深化という目的のための手段にすぎず、EC が、社会政策や地 域政策において、また経済通貨統合(Economic and Monetary Union: EMU)などさらなる統合プロジェクトを推進するために、大きな役割を担うべきものと考えられていた。

1988 年 9 月、サッチャー首相は、ブルージュのヨーロッパ大学における演説(24) で、欧州統合は「独 立した主権国家間の意欲的かつ活発な協力」が最善の道であると指摘し、EC 諸機関、特に欧州委員会に対しては、「権力がブリュッセルに集中し、任命制の官僚たちによって決定され」ていることを厳しく批判した。

サッチャー首相がブルージュ演説で示したのは、政治統合によって官僚支配されるヨーロッパで はなく、各国の政府間交渉によって開かれた市場となるヨーロッパの姿であり、その限りでは英国 が求めてきたグローバルな自由貿易の考えに沿ったものであった。しかし、これを契機として拡大した欧州懐疑派の中には、やがて移民反対など排外的な要素も取り込まれていくことになる。

QMV の範囲拡大には妥協 したサッチャー首相だったが、単一欧州議定書に基づくその後の統合深化の動きに対しては衝突を 繰り返し、それにつれて保守党内には欧州懐疑派という反統合勢力が拡大することになった。やが て 1990 年代には、欧州懐疑派には欧州統合の深化が英国経済に EU製の規制強化をもたらすもの と受け取られ、欧州統合支持派との溝が広がっていくのである。

 

黒太字はブログ管理人

 

これは、管理人が以前から認識していた、英国のEU参加までの経緯と同じだ。

 

1992年に調印したマーストリヒト条約に至るまで、サッチャー首相は多くの課題について、その強硬な主張を曲げずEC首脳らと再三衝突してきた。さらに、1993年同条約批准するまで「介入主義」を反対してきた。

 

こうした軋轢を恐れない姿勢は、サッチャー首相の面目躍如である。

 

しかし、そうしたサッチャー首相であっても、微妙に温度差のあるメージャー財務相(後の首相)を罷免したり、解散に打って出ることもしなかった。それをせず、結局妥協したのはなぜか。

 

これは、私の想像だが、英国の経済的利益だけでなく、巨大な単一市場をソ連との橋頭堡として考えたのではないだろうか。経済悪化により“液状化”が始まったソ連への《とどめの一撃》。“自由”な単一市場を夢見させることで、支配下にある国家にソ連から抜ける勇気を与えることになると。

 

結果的には予想を上回る速さで、1991年、ソ連は崩壊した。

 

以上の歴史を踏まえれば、EUはフランスとドイツ(当時、西ドイツ)が牽引したが、英国も参加した以上は運命共同体の関係である。双方の思惑にずれがあったにしろ、譲歩して歩み寄った訳であり、相手が気に入らないからといって短兵急に“合併解消”など愚の骨頂だ。

 

サッチャー首相は、1986年の単一欧州議定書支持が誤りであったことを認めているが、いったん同じ船に乗った以上、それが易易と許されることにならない。結局のところ、単一市場で経済的利益を上げて――シティは世界の主要な金融センターとして莫大な利益を上げた――、移民等で風向きが悪くなったからポイ捨てするなど、無責任の誹りを免れない。

 

例え、英国の国内事情があったにしろ、軽々にEU離脱を「政争の具」とすべきではなかった。“国民投票で否決されるだろう”と政権側が楽観視したことは、あまりに大きな過ちであった。

 

続いて、NATOの観点で考察してみる。

 

英国はNATOの設立メンバーであり中心的存在。EUという政治・経済連合からリーダー格が抜けるので、NATOの結束が崩れる可能性がでてきた。

 

NATOは軍事同盟だからEUとは別個だとの考えもあろう。が、前述のように英国とEUは運命共同体であるから、これから離脱することは精神的支柱を一本取り払うことに等しい。

 

例を挙げれば、設立メンバーであるフランスは、1966年軍事機構から離脱した。2009年、フランスは復帰したが、その43年間、屋台骨を背負ってきたのは米国と英国と言って過言ではない。

 

また、NATOには、ロシアの天然ガスに需要の四割を依存しながら、原発撤廃を掲げるドイツという“問題児”がいる。天然ガス供給停止を恐れて、ロシアのウクライナ侵略に中立的な態度を取るというドイツには呆れるばかりだ。このように、フランスやドイツは頼りにならないが、英国は米国と固い絆により長年ソ連を封じてきた。


中川八洋氏の『地政学の論理』(徳間書店、2009年)に学び、マッキンダー地政学やスパイクマン地政学を総合的に顧みれば、ハートランド(ロシア)に対抗するには、米国+ミッドランド・オーシャン+リムランドの結合が鍵となる。まさに、それを具現化したのがNATO。

 

その一角であるリムランドが脆弱となれば、ロシアが利益を得ることは疑う余地がない。言うまでもないが、欧州の軍事バランスが崩れれば、必然的にロシアは膨張する。

 

だから、EU離脱の背後で、離脱を煽ったのはロシアと疑うことは合理的だ。

 

その証拠の一つが、これだ。

 

ロシアからのツイッター投稿、国民投票前にEU離脱呼びかけ=英紙

https://jp.reuters.com/article/britain-eu-russia-idJPKBN1DF17A

[ロンドン 15日 ロイター] - 英タイムズ紙は15日、昨年の欧州連合(EU)離脱巡る英国民投票前の48時間に、意見対立をあおることを目的にロシアのツイッター・アカウントから約4万5000のメッセージが投稿されたと報じた。

 

続く。

 

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