2014.11.1

浜田宏一イェール大学名誉教授は、安倍総理のブレーンとしてその名前を広く知られています。
総選挙前、浜田は安倍総裁の金融政策を支持し、白川方明日銀総裁(当時)を論破する形となりました。浜田は、白川の東京大学経済学部在学時の恩師でもあり、その師弟対決は大いに注目を集めました。そして、浜田は、安倍晋三内閣誕生に伴い、金融政策の理論的支柱となりました。

現在、内閣官房参与として総理に影響力を持つ浜田宏一ですが、その浜田に師事し薫陶を受けたという評論家がいます。
それは、経済評論家の上念司です。
著者紹介には「浜田宏一に師事し薫陶を受ける」と記載されており、その関係がウィキペディアでも確認できます。しかし、どのように師事したのか、その内容はベールに包まれています。(冗舌な上念なら自慢するはずなのに、管理人の知る限りそのような動画などは存在しません。)

ブログ管理人は、以前よりこの人間関係に疑問を感じており、浜田宏一著『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社、2013年)を購入して、上念の名前がないかチェックしてみました。

結果は、驚愕です。
浜田宏一は、なんと上念司の著書を参考にしているのです。

しかし、端的にいって、日本がギリシャのような経済危機を迎えることはない。ここで、国債の累積と円の通貨価値、そしてギリシャとの関係について、あらためて説明しておこう。なお、この問題に関しては、上念司氏の著著「日本は破産しない!」(宝島社)も参考になる。
赤字ブログ管理人
前掲199頁

 「日本は破産しない!」については、ブロガーの保守イチローさんが論破していますが、浜田はそれを参考にした訳です。まさに超弩級の衝撃です。
そんな浜田ですから、“上念の影響では?”とうかがわせる論考も出てきます。
 

日本が絶対にギリシャにならない理由
かつてのベストセラーにたとえるなら、日本は借金にあえぐ政府(父さん)と、海外にも大きな資産を持つ民間部門(母さん)が支える家族のようなものだ。資産保有者が日本の国力に裏付けられた円資産を持つということは、父さんと母さんを合わせた家全体に、お金を貸しているのと同じ。だから円の将来には不安を感じないのだ。
前掲200頁
 

ブログ管理人は、『天才バカボン』という漫画を思い出しました。政府がバカボンのパパで、民間部門がママ....



上念の名前は、前掲書の「あとがき」でも出てきます。

そのメモアールを読んで貴重な意見を述べてくれた、故・加藤浩巳氏(元内閣府大臣官房審議官)、岩田一政氏(元日銀副総裁)、上念司氏(監査と分析)にも心からお礼を申し上げたい。
前掲269頁

上念は、元内閣府大臣官房審議官や元日銀副総裁らの大物と肩を並べており、これはとても師事の関係とは思えません。むしろフラットな人間関係を想起します。

では、ここから、ブログ管理人の憶測です。
上念司が浜田と知り合った詳細は不明ですが、恐らく「監査と分析」の共同パートナーの勝間和代を介するものと考えます。前掲書の中で、しばしば勝間の名前が出てきます。(知り合ったのは2009〜10年頃と思われる)

その後、浜田宏一は安倍総理のブレーンになりました。
仮に、上念の著書を参考にしたという事実が広く知れわたると、浜田の学者としての「値打ち」が暴落する可能性もあり、それを懸念した上念は、逆にこうした事実をできる限り伏せようとしているのではないでしょうか。これであれば、著者紹介において「師事し薫陶を受けた」程度に自重することと符合があいます。
以上、あくまでも管理人の憶測です。


なお、ブログ管理人は、浜田宏一を嫌いではありません。
例えば、消費税増税についても、どうしても必要であればIMFの主張に賛成し、長期、たとえば約10年にわたって、消費税率をわずか(たとえば1%)ずつ上げていく方策を支持するなど(前掲207頁)、柔軟性を持ち合わせた学者です。
また、前掲書のなかの告別式のくだりは優しい人柄がにじみ出ており、好々爺を思わせるものでした。
しかし、あの「日本は破産しない!」を参考にするとは、その見識を批判されても致し方ないと思います。

更に、前掲書の帯。
これは、高橋洋一が「ノーベル経済学賞に最も近いといわれる巨人の、救国の書だ!!」と推薦文を寄せています。
高橋洋一と言えば、温泉施設の更衣室ロッカーから高級腕時計を盗んだとして逮捕され有罪となっていますので、帯の推薦文を任せるには、さすがに不適当ではないでしょうか。

こうした上念や高橋の関わり方から想像すると、浜田はとても脇が甘いと思えます。怪しい人物たちに祭り上げられ、取り込み詐欺会社の社長になる「お人好し」がいますが、どうもそれに似たような感じがします。

こうした事実を知り、管理人は日本国民の一人として非常に落胆しました。上念司の著書よりも、せめて同じ「リフレ派」の岩田規久男学習院大学教授(現・日銀副総裁)の著書を参考にして欲しかったです。

蛇足ですが、ブログ管理人は、経済学のド素人です。したがって、経済を語ることは相応しくないのですが、それなりに健全な経済思想を持っている自負があり、今回著名な経済学者を批判する蛮勇を振るいました。なお、管理人の経済に対する根本的な考え方は、拙ブログの『保守主義の立場で「財政」を考える』をご覧ください。
また、管理人は「アベノミクス」には批判的で、(1)大胆な金融政策はリスクが高すぎる「偽薬」(2)機動的な財政政策は支持層(土建屋)対策といえ極めて有害(3)民間投資を喚起する成長戦略は過剰な福祉を改める方針なくして「効果薄」、と考えています。特に、「国土強靭化」など悪い冗談だと考えています。拙ブログの読者の方は、この点を加味して頂きますようお願いします。
 
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コメント
megu様

コメント頂き有り難うございます。

>浜田宏一氏といえば、ゲーム理論(ミクロ経済学)の大家ですね。

機会があれば、一度勉強してみます。
ただ、数学的素養が乏しいので、ほとんど理解できないと思いますが....
  • by マウス
  • 2014/11/01 3:31 PM
衝撃的ですね。今年も2ヶ月で終わりですが、最も驚愕した事件かも知れません(笑)。

浜田宏一氏といえば、ゲーム理論(ミクロ経済学)の大家ですね。
ゲーム理論の研究では、その名は世界中に知れ渡っており、日本人では数少ない世界レベルの経済学者です。
かくいう私も、以前、浜田氏の著書でゲーム理論を学んだことがあります。

言葉を失ってしまい、何とコメントして良いのか気が動転してしまっています。
STAP細胞のようなことにならないといいのですが。
  • by megu
  • 2014/11/01 11:41 AM
保守イチロー様

コメント頂き有り難うございます。

>ところで、浜田宏一は、尖閣/竹島問題の棚上、靖国の代替施設、村山/河野談話の踏襲を提言するのですから、明白な極左ですね。

ご指摘感謝します。ご指摘の点は、全くノーチェックでした。そうすると、人柄について私は騙されていたみたいですね。
  • by マウス
  • 2014/11/01 10:36 AM
マウスさま

 上念司の著作を参考にするとは、浜田宏一の学者としてのキャリアは完全に終焉しましたね。
 理系の研究者が「ためしてガッテン」を引用文献にするのと同じことです。

 ところで、浜田宏一は、尖閣/竹島問題の棚上、靖国の代替施設、村山/河野談話の踏襲を提言するのですから、明白な極左ですね。大内兵衛が率いる東大経済学部ですから、極左教授しかいません。
  • by 保守イチロー
  • 2014/11/01 9:49 AM
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