2018.7.20

 

前回の続きである。

 

3.英国によるEU改革ができなくなる。

 

前回、ブログで引用した部分を再掲する。

欧州の極右政党がドイツに集結。トランプ旋風が欧州にも吹くのか?

https://www.excite.co.jp/News/world_g/20170127/Harbor_business_127039.html?_p=2

●不法移民の本国への送還。
●シェンゲン協定を廃止して、欧州連合の間でも国境を復活させて、不法移民の流入を防止しコントロールする。
●ユーロ通貨を廃止して経済格差の是正をする。
●欧州連合を解体させて各国が国家の尊厳を取り戻す。

 

極右が煽る、不法移民本国送還・シェンゲン協定・ユーロ通貨等、いずれもEUの組織として対応が後手に回った感が否めない。(勿論、極右の主張を取り入れろという訳ではない。EUとして確固たる方針が定まらないので、極右につけ込まれる。)

 

なぜ、後手に回ったか。

 

EUををおさらいしてみる。EU加盟国28ヵ国。欧州理事会議長(以下、議長)は、欧州大統領(以下、EU大統領)とも呼ばれる。2009年に「常任議長」とされるまで、法的根拠のない輪番制であった。議長は欧州委員会委員長(以下、委員長)の任免できず、また欧州議会の解散もできない。言わば、名誉職的な存在。

 

欧州委員会は、EU政策執行機関でEU政府とも言える。委員長は首相と同じ。議長との関係において、フランス型のような半大統領制を目指すのか、議長を元首とするが政治の実権を委員長による議院内閣制を目指すのか、はっきりしない。(現実には、委員長に権限があり、実質的に議院内閣制になっている)

 

また、欧州議会議員選挙前に委員長候補がはっきりしない等の諸問題もあり、課題が多い。これだけ見ても、欧州市民の負託に応える体制になっていない。一言でいえば、曖昧な政治体制だ。

 

このような曖昧な政治体制だから、後手に回るのだ。しかも、後手に回るくせに各国の国内事情を無視した決定がいきなり下りてくる。ユンケル委員長は、12万人の難民をEU加盟国に義務的に割り当てる「クオータ制」の導入を提案したが、これなど委員長の横暴と思える。

 

さらに“権威”が絶対的に不足している。EU大統領の議長は名誉職そのもので、元首として威厳は感じられない。だから、“権威”によってEUをまとめ上げることもできない。

 

さらに、中途半端の政治体制なので、それを補完するため必然的にEU官僚が強くなる。官僚の特性として統制を強めるのは自明で、規制を作ることに明け暮れ結果的に経済の自由を侵し、EU全体を「大きな政府」に変えていく。そして、官僚組織はさらに肥大化する...

 

サッチャー元首相が警戒した「権力がブリュッセルに集中し、任命制の官僚たちによって決定される」の出現である。

 

しかし、英国がEU離脱すれば、英国によるEU改革ができなくなる。欧州懐疑主義の定義は難しいが、管理人は少なくとも英保守党は一部を除いて、穏健な欧州懐疑主義だと考える。その穏健な声がEUに届かなくなる。

 

これが非常に痛い。

 

英国のEU離脱により、EUの社会主義的傾向が一層強まるのではないか。人権だの社会保障などにうつつを抜かすことになるだろう。こうなれば“白い共産主義”がEU全体を覆うことなる。

 

このような暗い将来が想像されるが、リスボン条約第50条の定めで英国EU離脱は2019年3月29日。

 

最後は如何に離脱するかが問われる。完全にEUと手を切るのか、それともメイ首相の離脱方針「ソフトブレグジット」を選ぶべきか。管理人は、英国とEUが一定の関係を保てる「ソフトブレグジット」が正しい選択だと思う。これであれば、NATOに関してはなんとか現状維持が図れそうだ。

 

ところで、英EU離脱派はメイ首相に強力な圧力を掛け続ける。が、EU離脱強行派のボリス・ジョンソン外相がメイ首相の方針に反対し辞任したことで、皮肉にも「ソフトブレグジット」が正しい方向性であることが理解できた。特に、メイ首相が英国のまとまりを重視し、アイルランドと北アイルランドの国境問題にも腐心しているのは全く正しいと思う。

 

最終的にどのように決着するかは予測困難だが、メイ首相が幾多の試練に打ち勝って、穏健な離脱の成功を祈りたいと思う。

 

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